堀北真希論 上 - 堀北真希の「光」と「影」

堀北真希が、最近アツい。
88年生まれの17歳、デビュー3年目の彼女が
昨年来、「逆境ナイン」「野ブタ。をプロデュース
ALWAYS 三丁目の夕日」など立て続けに活躍、注目を浴びると、
今年に入っても「クロサギ」「着信アリFINAL」で活躍するなど
勢いがとまりそうにない。

彼女がなぜここまで注目されるのか。


1つにあげられるのは、彼女に「かわいさ」や「萌え」を
多くの人が感じるからであろう。
芸能事務所「スウィートパワー」に所属し、
彼女は内山理名有坂来瞳に続く路線をたどっている。
彼女が芸能界入りしたきっかけは、
ジャージで学校から下校中にスカウトされ、
さらに家までスカウトがやってきてお願いされたことによる、という。

彼女は「普通の女の子」から異彩を放つ「かわいさ」の持ち主である。
しかし、芸能界には「かわいい子」などたくさんいる。
そしてトップに上り詰められるのは、そのごく一部である。
グラビアアイドルなど、一般に知られていない名前のほうがむしろ多いくらいだ。
果たして「かわいさ」だけで彼女はここまで上り詰められたとは言いがたい。


堀北真希が注目される要因のもう1つは、
彼女の、「おとなしい」性格、「まじめな」性格である。

女優とはいえ、バラエティーに出ると
普段の役柄、イメージと相反するキャラクターを押し出す者もいる。
しかし、彼女はそうではない。
本人が「バラエティー番組などのトークが苦手」というように、
バラエティー特有の「作られた解答」を答えようとせず、
自分なりに考えたことを自分なりに表現しようとする、
そんな彼女の姿勢が、彼女のバラエティー出演時に表れている。

彼女は多くの作品に出演しているが、そこでの役作りにもそれは表れている。
たとえば、「逆境ナイン」や「電車男」における「普通の」女子高生から、
着信アリFINAL」などのホラー映画、
それに「野ブタ。をプロデュース」のいじめられ役など
キャラクターも多岐に渡る。
そして、どの作品を見ても「堀北真希」そのものではない、
堀北真希演じるキャラクターがきちんと演じられている。

それは、決して「光」のかわいさだけでは
映し出すことのできないものである。
「影」の、どこか影のある彼女の雰囲気、
台本一読で役になりきることのできる彼女の役作りへの「まじめさ」がなければ、
決して、今の彼女のブレイクはありえない。


今彼女が評価されるのは、
彼女が「光」も「影」も持ち合わせるからである。
したがって、彼女を「かわいい」「萌える」だけで評価するのは、
彼女に対して失礼である。

彼女は「未完の大器」と称される。
多くの女優が、「自分」から抜けられず役に完全になりきれず、
いつの間にか消えていく。
「かわいい」からとか「萌える」からとかで、
女優は女優としての役割をまっとうできない。
女優は役になりきれるからこそ、女優であり続けることができる。

端正な顔立ちから「かわいい」とか「萌える」と思われがちな彼女だが、
一方で彼女は女優としての「未完の大器」の素質を持ち合わせているのである。
今、「着信アリFINAL」が盛況だが、
今後も暫く、彼女の精力的な映画・テレビドラマへの出演は続くことだろう。