『下流社会』とある大学の先生

今日読み終えたのですが、
三浦展著『下流社会』(光文社新書、2005年)からは
非常に感銘を受けました。

この本で書かれていることを一言で説明すれば、
現在、社会階層が二極化しており、
中流階層が上下に分離したことによる。)
その階層間で意欲に差が発生し、
そのことにより今後の社会において
さまざまな影響が起きることだろう、ということを
データで示していることです。
ニートの話で置き換えるとわかりやすいかと思います。)

最近勉強を重ねる中で、
この社会階層の二極化という問題は、
現代社会において非常に深刻な問題だと考えます。
これは私たちにとっても、
その二極化された階層のどちらに属することになるのか、
それによって私たちの生活はどのように変化するのか、
こういった身の回りの問題に発展する話です。
もはやこういった問題と向き合うことから
避けて通ることができない社会情勢に
なったと考えることができるでしょう。

そう考えれば、非常に面白く、
そして私自身にもいろいろと
考えさせられることがあったのです。


さて、このように感銘を受けた本に出会うと、
私はどうしてもその内容について
誰かしらにその良さを伝え、議論をしたくなるものです。

これまではやめたサークルでそのようなことができましたが、
もはや普通の学生とはできない話です。
そこで、私は先生にその相手を求めることを考えました。


そして、その出会いは今日の労務管理論の授業にありました。
今日のテーマは、企業内の雇用のあり方についてでした。

昨今の企業において、
たとえば外部労働市場へ依存してきている傾向にある
といった話があります。
その中で、被雇用者に求められていることは、
これまでのように黙って企業についていけばいい、
そんな時代のような姿勢ではありません。
自分で自分の能力を高め、
それに責任を負わなくてはならなくなったのです。
また、そのほか、コミュニケーション能力や
クリエイティブ能力なども問われてきたといいます。

しかし、このようなことは誰も支援してくれないのです。
たとえばコミュニケーション能力など
どうやって鍛えればいいのでしょうか。
答えは、さまざまな人と出会い交流することにしかないと
私は思います。
しかし、そのようなことも誰も教えてくれません。
知っている人は知っている、そして成長できる、
知らない人は知らないまま、成長できない。
それ以前に自分を鍛えることを知らない人もいる。
そんな些細な差が、
実は何十年も先の自分の将来に左右してしまう。
社会階層の二極化という現象を考えれば、
階層差別ともいうべき事態が起きているのです。

しかし、そのような問題を
どのように打開すればいいのでしょうか。
その答えは見つかっていません。
そして、私も考えてもわからないのです。

今日の労務管理論の授業の後、
先生にこのことについて質問してみました。
しかし、労務管理の専門家でもある先生も、
わからないというのです。
そこからわかったことは、
それだけ難しい問題である、ということでした。

しかし、先生はこうも付け足してくれました。
私は教育者だ、
意欲はあれど方法を知らない人には
方法を伝えなければならない、
意欲のない人にはまず意欲を持ってもらえるよう
呼びかけなければならない、
それが私に課せられた使命なのだ。
私は納得しました。
結局、私たちがこのような問題に立ち向かうには、
自分たちでできることは何なのか考え、
そしてそれを実行するしかないのです。

授業の内容よりは発展した内容であり、
先生には無駄に時間を付き合ってもらって
申し訳なかったと思います。
しかし、私の話に付き合ってくれるほど、
先生には熱意があり、
そして学生に対して信用や期待があったのです。
そんな先生がこの同志社にいたことを誇りに思うとともに、
その先生に非常に感謝の念を覚えたのでした。